シナリオ・台本

【HEARシナリオ部】2022年4月のシナリオ『誰がための財宝』

 たけのこは音声投稿サイトHEARで「HEARシナリオ部」に所属しています。

 物語創作が好きなユーザーによる部活で、HEAR内で自由に使ってもらえるシナリオを制作・公開するのが主な活動です。

 今回は「地図」をテーマにしたシナリオ『誰がための財宝』を掲載します。よろしければ朗読にお使いください。

『誰がための財宝』本文

 私には趣味がない。
 だからと言って、数カ月ぶりの休みをただ寝て過ごすなど、無意味な時間の浪費だ。

 計画性もなく外を歩き続けていると、一軒の小さな商店を見つけた。築年数を感じる佇まい。
 店に入ると、子供の小遣いでも購入できる菓子ばかりが並んでいる。奥には白い割烹着(かっぽうぎ)の老年女性が座っていた。店主だろう。

 この地域が私の職場になったときに、地理は一通り覚えたつもりだったが……まだまだ勉強不足だ。
 
 懐かしい駄菓子の中に、薄切りにした食パンほどの絵本が並んでいた。どれも日に焼けて、背表紙の文字が淡い。
 適当に引き抜いて中を開くと、一枚の紙切れが挟まっていた。

 これは……地図か。

 簡略化されているが、店の周辺が描かれている。

 矢印が指すのは……近くの公園だな。
 正方形の隅に王冠のマーク……宝でも埋まっているのだろうか。

 店主に訪ねてみるが、私を子供と誤認しているようで、返答に要領を得ない。

 まあいい。どうせやることもないんだ。たまには童心に帰ってみようじゃないか。

 公園には数人の親子連れがいた。私に反応を示すことはない。

 先週、この辺りで大きな仕事をしたのだが……記憶に残せる結果を出せなかったんだな。精いっぱい努力したのに、何が悪かったのだろうか。

 空回る現実から逃げるように、私は手元の紙切れに目をやった。

 地図の示す場所はおそらく砂場だ。
 そう考え、囲いの隅を順番に手で掘っていく。砂の手触りが妙に心地いい。

 さすがに視線を感じた。大(だい)の大人が一人で砂場遊びをしていれば当然だな。
 どうせどこの誰かも知られてないんだ。開き直って宝を探してやろう。

 三箇所目の隅を掘っていると、プラスチックのトイカプセルが出てきた。
 中には劣化した紙切れが一枚、また地図だ。
 次は……神社か。
 
 
 賽銭箱から右に七歩、左に八歩。ここだな。

 書かれた矢印と数字に従って進み、たどり着いたのは一本の植木。適当な石を拾ってきて、根元を掘る。

 周りには誰もいない。見ているとすれば神様くらいか。あとで私の行動が愚かだと天罰を下すかもしれないな。生産性も、意味もない。無駄な行為に興じているのだから。

 自分自身に呆れていると、土の中から小さな缶ジュースくらいの瓶が見つかった。
 中身を確認したそのとき、こちらに向かってくる足音に気づく。

 まずい、警察だ。
 ここでの行為を説明するのはややこしい。万が一、警察と一緒にいるところを写真にでも撮られたら、仕事に大きく影響するかもしれない。

 私は静かに急いで、その場を離れた。

 上手く警察を巻き、最初の商店へと戻る。瓶に入っていた地図が、ここを示していたからだ。

 店主に三枚の地図と、瓶に同封されていた折り紙のメダルを見せる。
 スリリングだった宝探しも、これでおしまいだ。

 店主は笑いながら、私にこう言った。
 「たからをみつけたんだね」と。

 ええ。見つけましたよ。きっと私が、無意識に探していたものを。

 私は毎日、行動の意味や結果だけを考え、利益や合理性ばかりを求めていた。
 だけど宝探しは普段と真逆。意味もなく、利益のない結果のために時間を費やした。

 だから掘り起こすことができたんだと思う。
 日々の仕事で失っていた「楽しい」という感情を。

 翌日から職務に戻った私は、仕事を楽しむことを意識し始めた。
 するとどうだろう、身の回りのことが少しずつ上手くいくようになってきたのだ。
 今までぎこちなく回っていた歯車が、ようやく噛み合った。そんな気分だ。

 きっかけをくれた店主には感謝しかない。

 受けた恩を返すためにも、私はより良い未来の地図を描かなくてはならない。
 住民たちの新しい市長として。

<終>

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