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【声劇台本】伝記:ドートル(1人・5~10分)

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作品情報

・朗読
・作中で演じる人物:1人(語り手)
・長さ:約5分
・備考:この伝記に登場するのは架空の人物です

『伝記:ドートル』本文

 15世紀、ポルトガルとスペインを中心とした大航海時代の到来は、世界の拡大をもたらしました。新たな航路やアメリカ大陸の発見は、学校の授業で習う通りです。

 ドートルもまた新大陸を目指した航海者のひとりでした。彼の功績は著名な人物に名を連ねるものではありませんが、今も私たちの生活に大きな恩恵をもたらしています。

 まずは当時の背景についてお話しましょう。

 大航海時代のきっかけのひとつとなったのは、マルコポーロの東方見聞録でした。旅行記が世に広まると、興味を持ったヨーロッパ諸国はアジア・アフリカ・南北アメリカ新大陸へ進出します。
 ちょうどその頃は、羅針盤の登場や船舶形態の変化などにより、遠洋航海術は大きく進歩しました。まだ見ぬ遠い大陸への期待を駆り立てたことでしょう。

 先陣を切ったのは『航海王子』と呼ばれたポルトガルの王子エンリケ。アフリカ西岸への進出を図りました。インド航路の開拓は進み、バルトロメウ=ディアスが喜望峰に到達。ヴァスコ=ダ=ガマによるインドのカリカットへの到達が続きます。

 新大陸の到達ではコロンブスが有名です。のちのアメリゴ=ヴェスプッチの探検により、アメリカ大陸は存在を明らかにされました。そしてスペインのマゼラン船団は西回りではじめて世界を周航したのです。

 世界が拡大していく中で、今回お話するドートルはどのように大海へと繰り出したのでしょうか。

 ドートル・スタクスは1475年に、ポルトガル南部にある海沿いの町サマルンクで生まれました。家は漁業で生計を立てていたので、ドートルは手伝いをしながら航海に関する知識と経験を身に着けていきます。小さなころから好奇心旺盛で、その熱量は常に果てしなく広がる大海原へと向けられていました。

 成人となったドートルは、名家出身の母のつてで宮廷に出仕します。そこでさらに専門的な知識を学ぶことができました。

 そして大航海時代が到来すると、ドートルは真面目な性格と熱意を買われ、司令官として航海を任されたのです。しかし初めの頃は成果が得られません。重圧や責任を感じるようになったドートルは、32歳の時に無謀とも言える航海計画を立てました。

 結果を求めて出港したものの嵐により船は座礁。ボロボロの状態でなんとかたどり着いた陸地が、当時未発見だった南アメリカ大陸のさらに南にある島、チェベーロ島だったのです。

 現地の民は友好的でしたが、自国に帰る当てもなく、島での生活を続けました。その約3年後にマゼランの一団がチェベーロ島を発見、ポルトガルへと戻ることができたのです。
 そのときに持ち帰ったのが島の特産品、コーヒー豆でした。

 1454年には一般民衆の飲用が認められたコーヒー。チェベーロ島で栽培されていたコーヒー豆はそれまで流通していたものより風味がよく、高級品として修道者や一部の貴族の間でたしなまたのです。
 今では世界中に流通しており、専門店や多くのコーヒースタンドで扱われています。

 成果を持ち帰ることができたドートルでしたが、3年も音沙汰がなかったため、自国では死亡扱いとなっていました。彼はまだ海に出る意欲にあふれていましたが、地位を失っていたため船を出すことはできません。さらに体調を崩してしまったことも重なり、その後の航海は叶わぬ夢に終わります。

 ドートルは故郷の町に戻り、海を一望できる丘に家を建て、そこで余生を過ごしました。時折訪ねてくるかつての仲間に彼はこう言ったそうです。

「きっとこの海の向こうには、まだ多くの未知なる大陸があるに違いない。それを見つけるのが私でありたかった」

 ドートルの功績は一部の人間の知るところであり、今もサマルンクの町の丘には、彼の住んでいた家が残されているそうです。

 なんて話が実在したら、とてもロマンチックだと思いませんか?

 <終>

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