シナリオ・台本

【創作台本】スリーウェイリバーサイドにて(1人・約10分)

作品情報

・現代劇/掛け合い
・作中で演じる人物:1人(黒スーツの人物)
・長さ:約10分
・備考:◇はト書き、登場人物は2人ですが演じるのは1人です

台本のご利用について

・利用の報告はご不要です(お知らせいただけると嬉しいです)
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①台本のタイトル
②作者名(竹乃子椎武)
③ブログサイト名(やっぱりたけのこぐらし)
④ブログサイトのURL(https://takenokogurashi.com/)

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『スリーウェイリバーサイドにて』本文

※「」はすべて黒スーツのセリフ

◇小樽運河のような洒落た川沿いに、男が一人佇んでいる

「(遠くから)あっ、いた!」

◇遠くから黒スーツ姿の人間がひとり近づいてきて、男に話しかける

「いやあ、探しましたよ。庁舎(ちょうしゃ)から聞いていた場所に行ったらいないし、問い合わせたらイレギュラーだから分からん、自分で探せって逆ギレされるし……ほんっと事務は外回りの苦労も知らないから」

◇黒スーツ、ひとりでべらべら話していたことに気がつく

「ああ、すみません。とりあえず座りましょうか、立ち話もなんですし。あそこのベンチにしましょう」

◇二人、ベンチに座る

「よいしょ。いやー天気も良くて散歩日和ですね。ま、いっつも晴れてるんですけどね。ひひひ。
 スーツ姿で並んで座っているのはどうかと思いますが……なんでこんな日になんで働かなきゃいけないんでしょうか。」

◇男、心ここにあらずで川を眺めている

「さっきからずーっとこの川を眺めていますけど、珍しいですか? それとも綺麗だから見とれているとか」

◇黒スーツ、目の前に広がる川に向き直る

「整備してから、殺風景な河川敷が見違えるくらいオシャレになりましたよ。その分つぎ込んだみたいですけどね。おかげで人気スポットになったし、出店が増えたのは嬉しいですね。
 あ、何か食べましょうか?」

◇黒スーツ、そばにある出店を指さす

「あそこのかまどで煮立っているご飯とか、あの赤いジュースも美味しいですよ……いらない? ……そうですか」

◇やや間が開き、黒スーツは手元の資料をぺらぺらとめくる

「残業137時間、サービス残業を含めたらもっと行きますね。ずいぶんと働きづめで、そりゃあ倒れて当然ですよ」

◇男、不思議そうな表情で黒スーツを見る

「そうですよ、あなた意識不明なんです。だからここにいるんですよ。いやいや、病院じゃ……いや、肉体は病院にあるから、半分正しいか」

◇男、黒スーツの言っている意味が分からず混乱する

「ここがどこかって? いやいや、この川を見れば分かるじゃないですか。ここは三途の川ですよ。あなたの魂はもう此(し)岸(がん)——現世にはありません」

◇黒スーツ、男に「俺はどうなったんだ?」と聞かれる

「え、と……まあ天に召されたというか、これから召されるというか。まあまあ、そんなに落ち込まないで。人気スポット5選に選ばれた川でも見て、落ち着いてください」

◇黒スーツ、男に「三途の川って言ったら、親より先に死んだら石を積み上げる場所だよな」と聞かれる

「親より先に死んだら石を積み上げる? 何百年の話ですか、それ? そんなしきたり、川の整備と一緒に廃止されましたよ。生産性がないって。
 古いお偉いさん方は残せってうるさかったらしいですけど、若い革新派が撤廃案を通したんです。みんな結構前から意味ないって思ってましたし、妥当ですね。
 そうそう、石は詰めませんけど、あの遠くにあるレストハウスでジェンガ詰めますよ。ひひひ」

◇黒スーツ、男を無視して説明を始める

「ついでに説明すると、併設されている建物が係留施設、あの向こうに定期船が停まっています。で、この川を渡った向こうが彼岸、あの世ってところです。
 知らなそうなんで先に言っておくと、向こうも大分様変わりして、雰囲気よくなりましたよ。審判形式の見直しもあって、判決が下るまでの時間も大幅短縮されました。
 みんなが楽になるなら、さっさと変えればよかったんですよ。これだから現場を知らないお偉いさんは……」

◇男、ベンチから立ち上がり係留施設に向かおうとする

「ちょ、待ってください、どこに行くんですか? ……さっさと渡る? いや、まだ出航時間じゃないですし、それに……あなたはまだ乗る資格がないんです」

◇男、黒スーツに「どういうことだ?」と聞き返す

「いやあ、その……たぶん、極限的疲労が原因だと思うのですが、寿命が来る前に肉体と魂の接続がぷつっと切れちゃったみたいなんです。事前連絡なしに。
 普通は前もって連絡なりなんなりがあって、死神部署が魂を回収・手続きするんですけど……あなたはイレギュラーだから連絡はないし、勝手にふらふらこっちに来ちゃったから、こんな場所にいるし……スーツ姿なのも未練が立ち切れていない証拠です」

◇男、黒スーツに戻りたいと言い出す

「へっ、戻りたい? 戻ったところでまた働きづめですよ。最近の現世は昔の地獄よりひどいって評判悪いじゃないですか。
 その点、今の地獄は全然マシです。刑罰が重すぎる、罪人の人権を無視しているって団体が騒いだおかげで、労働時間短縮、自由時間も確保されていますから。
 まああなたは行いが良いので、地獄にはいかないと思いますけど」

◇男は「それでも戻る」と頑なに主張する

「(ため息)そこまでして戻りたい理由って、なんです? もしかして社畜ってやつですか?」

◇男は「妻がいる、もうすぐ子供が生まれる」と訴える

「配偶者と、生まれてくる新しい家族のため、ですか……それが今まで無理できた理由か」

◇男の話にしばし考える黒スーツ

「そこの階段を上がって上流に進んで、二つ目の十字路を左に曲がって真っすぐ行くと、霧が濃くなってきます。帰りたい場所を強く思い浮かべながら突っ切ると、もしかしたら戻れるかもしれません。向こうとこちらを結ぶ道ですから」

◇男、黒スーツにお礼を言う

「お礼なんていいんですよ。どうせここのことなんて覚えちゃいませんし。それにイレギュラーの修正手続きってかなり面倒なんで、最初からいない方が私としても好都合ですから。
 行くなら早い方がいいですよ。魂を回収して戻ってきた死神に見つかると厄介です。
 あ、こんな言い方もおかしいですが……お元気で。ひひひ」

◇男は黒スーツの言った方向に走っていく。川沿いのベンチに黒スーツだけが残る

「目標があって働ける人はいいですね。もしかしたら社畜は私の方かも……ああ、これは笑えない」

◇黒スーツ、懐から携帯電話を取り出してかける

「お疲れ様です。全然見つかりませんよ、また間違いなんじゃないですか? ただでさえ人手不足なんですから、勘弁してくださいよ。せめて給料上げてくれませんかね? え、こっちに言うなって? 愚痴のひとつも言いたくなりますって――」

【終】

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